こんにちは。
Jewelです。
中国による「香港国家安全維持法」が6月30日に施行されましたね。
この法律が制定されたのには、2019年から始まった香港の大規模デモが大きく関わっています。
施行翌日の7月1日には1万人以上の香港市民が、この国家安全維持法に対して再びデモ活動をおこなったため、
早速約370人が違法な集会容疑などで香港警察に逮捕されてしまいました。
香港市民の反政府的な抗議活動に対抗できるよう、中国が強行するような形で「香港国家安全維持法」を施行したわけですから、
早速その法律を盾に香港市民への取り締まりを始めたわけですね。
香港市民は、2014年に行われた民主的な選挙を求める抗議活動「雨傘運動」や、2019年の「逃亡犯条例改正」反対から派生した大規模デモも含め
かなりの長い間反政府活動を続けてたのですが、解決しないまま香港国家安全維持法の施行により、デモ活動は強制終了されてしまったことになります。
そこで今回は、香港のデモがなぜ起きたのかわかりやすく説明するとともに、香港や日本への影響も解説していきたいと思います。
香港のデモはなぜおきた?わかりやすく解説
大前提として、
香港は、1997年にイギリスから中国に返還されました。
しかしイギリスと中国の約束で、香港は社会主義国の中国の中にありつつも、特別行政区として外交と防衛以外は「香港は独自の政府を持ち、資本主義や司法の独立などが保証されている」
という一国二制度制が50年間導入されています。
今まで資本主義であり、民主主義のイギリスに慣れて生きてきた香港市民が急に、社会主義国家に慣れるのは非常に難しい、法整備も含め時間がかかることだと判断されたからですね。
そのため、今の香港では日本やアメリカ、欧州諸国と同様、資本主義、民主主義のもと、香港人による自治、言論・出版の自由、報道の自由や、さらに自由な情報収集ができる状態なのです。
(社会主義の中国では、この自由が基本的に規制されています)
>>中国と香港の一国二制度を分かりやすく解説
一国二制度とはわかりやすく解説~中国と香港の関係や国家安全維持法
香港国家安全維持法施行の背景
中国でありながら、独自の政府を持つ香港でなぜデモが始まったのでしょうか。
雨傘運動
民主主義的な考えをもつ香港市民は、当然選挙に対しても普通選挙を求めています。
香港は、現在特別行政区のなかで中国とは関係なく、独自の自治を認められていますから、その行政をつかさどる行政長官(トップ)を決める際も、
民主主義の考え方である、一人一票の普通選挙で決められるのが当然だったわけです。
2014年の8月に中国政府からも、2017年に行われる予定の香港特別行政区行政長官を決める際の選挙は、一人一票の普通選挙で行うことが発表されました。
しかし、実際フタを開けてみると、
その選挙は、一人一票の普通選挙ではあるものの、中国政府が認定した「指名委員」の過半数の支持を受けた人だけが候補者になれるものでした。
つまりは、中国政府の意に沿った候補者しか出ないため、中国の意に沿った候補者の中からしか行政長官を選べなかったわけですね。
いわゆる形だけの選挙です。
一人一票持ってても意味がありませんね。。。
これに反抗した人々が立ち上がり、2014年に大規模なデモとなったのが雨傘運動です。
この選挙方法が続く限りは永遠に、香港市民は、香港市民の声を聞いてくれない香港政府に対して反発し、強いては中国中央政府への批判とつながるわけですね。
逃亡犯条例改正の反対運動
雨傘運動以降の大きなデモとして有名なのは、記憶に新しい逃亡犯条例改正への反対から発展し、香港政府に対して5大請求を突き付けた、2019年の香港デモ活動になるわけです。
逃亡犯条例は、
香港以外の国で罪を犯した香港人容疑者を、犯罪が起きたその国の要請に応じて引き渡せるよう定めた条例です。
香港はこの条例を中国を除く米国や韓国など20カ国と協定を結んでいます。
しかし、香港政府はこの逃亡犯条例を
犯罪者の身柄引き渡しを簡略化して、引き渡し協定を結んでいない国からの要請でも容疑者を引き渡せるようにする
と改正する動きを見せ、容疑者や犯罪者の身柄の引き渡しを中国にも可能にしようとしたわけです。
(香港政府は先ほども書いた通り、実際は中国の息がかかってしまっています)
香港市民はそこに反発を覚えることになります。
というのも、お伝えしたように、一国二制度で香港市民は私たちと同じく言論・出版の自由などが認められた民主主義の下で生活しています。
香港にいるからそれができるわけですが、中国と引き渡し協定を結んでしまうと、中国の法にのっとって香港市民の言動が裁かれることになります。
中国では、言論・出版の自由や、インターネットなどから自由に情報を収集することに規制がかかりますから、当然そういった自由な行動が犯罪行為とみなされるようになってしまうわけです。
この逃亡犯条例に反発してデモ活動が始まったわけですが、警察の行き過ぎた武力行使への不満もつのり、最終的にはデモ活動の要求は
- 逃亡犯条例改正案の完全撤回
- 市民活動を警察や政府が「暴動」と定義しないこと
- デモ参加者の逮捕と起訴をやめること
- 職権を乱用した警察の暴行の責任追及すること
- 林鄭月娥行政長官辞任と民主的選挙の実現
となったわけです。
1の逃亡犯条例改正案の完全撤回に関しては、香港政府は飲む形になりましたが、5の林鄭月娥行政長官辞任と民主的選挙の実現に関しては、
中国中央政府も絡んでくるわけですよね。
そもそも雨傘運動でもわかるように民主的選挙を実現できておらず、中国中央政府に対して香港市民は不信感しかないですからね。
そうなると、香港政府もなかなか鎮圧できず、デモ活動に対して武力行使でのみ抑えてきたわけですが、、いよいよ中国中央政府が登場することになるわけです。
「香港の治安維持」という名目ですね。
>>逃亡犯条例について詳しい記事はこちら↓↓↓
逃亡犯条例とはわかりやすく解説【改正がなぜ問題?中国香港の関係】
中国が施行した香港国家安全維持法の内容
香港国家安全維持法の内容は以下10点にまとめられています。
香港の永住者と非永住者の両方に適用されます。海外に住んでいる香港市民にも適用されるという事ですね。
ちなみに2020年6月30日の施行以前の行為については適用されません。
1.「国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託」の4つを犯罪行為と定める。
2.国家安全維持法に違反すると最低3年、最高で無期懲役
3.香港の法律と矛盾する場合は国家安全維持法が優先される
4.裁判は非公開でおこなう可能性がある
5.中国政府は香港に国家安全オフィス(NSO)を設立する
6.中国が深刻とみなせば、海外にいる香港非居住者も対象となる可能性がある
7.香港警察内に新たに国家安全保障部を設立し、警察に多様な権力を与える
8.香港の行政長官は裁判官を任命できるが、国家安全を危険にさらす発言をした裁判官は任命されない
9.行政長官を代表とする新たな国家安全保障委員会を設立
10.香港政府は、学校、メディア、インターネットなどで市民への教育を要求する引用元:香港BS HP
恐ろしいのは、1つめの「国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託」の4つを犯罪行為と定めるという項目。
この犯罪行為の判断のさじ加減は中国側にゆだねられているというところです。
例えばテロリズムの認識が、言論の自由や報道の自由に厳しい中国からすると、中国中央政府を批判した文書を書いただけで、最低3年、最高で無期懲役になる可能性があるわけです。
また、裁判が非公開で行われる、警察に多様な権力が与えられる、、、
教育や報道まで自由を奪うような内容まで。。。
一国二制度がおわった、、、という感じさえしますね。
香港国家安全維持法による香港、日本人への影響
香港への影響
7月1日に、香港国家安全維持法の施行に反抗した人の中で逮捕された10人は、早速国家安全維持法違反の容疑で逮捕されており、
香港独立と書かれた旗や印刷物を所持、香港独立と叫んでいたと香港内では報道されています。
はい、まさかのそれだけで国家安全維持法違反として逮捕されるわけです。
もちろん、これまでデモ活動していた香港市民の中には同法で認められている処罰を恐れて、即座に活動をやめた人たちや、SNSへの書き込みを削除した方も沢山いるようです。
当然この先、民主的な思考を求める活動や言動をしてしまうと、いつどこで中国から目をつけられ、どうなるか分からないですね。
まさに雨傘運動でスポークスマンを勤めていた周庭さんが先日逮捕されましたね。
日本人への影響
日本だけではなく全世界で言える話になります。
日本在住の香港民主化活動家の逮捕
実は、「香港の警察がイギリスやアメリカなどに住む香港民主化の活動家6人を、香港国家安全維持法に違反した疑いで指名手配した」とすでに報じられています。
さきほどご紹介した、国家安全維持法の内容に
中国が深刻とみなせば、海外にいる香港非居住者も対象となる可能性がある
とありました。
中国側が国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託をしているとみなした、海外在住の香港国籍者も罪に問われるわけです。
更に恐ろしいのは、既に香港国籍ではなく、例えばアメリカ市民権を得ていてアメリカ人として生活していても対象となるわけです。
そうなると、日本在住の香港の民主化活動家も中国政府から狙われている可能性があり、その人とかかわりのある日本人にも影響を及ぼす可能性もありますね。
香港での日本人の逮捕
香港民主化に賛成している日本人も多くいますね。
しかしながらこの国家安全維持法が施行されたため、日本人が香港に訪れた際の言動に対して中国に目を付けられる可能性があります。
香港民主化活動家と仲良くしている、もしくは何かしらの活動を共にしてしまったりした場合は、国家安全維持法違反と判断され、何かしらの処分をうけるかもしれません。
香港での事業が厳しくなる
国家安全維持法の内容の中に
香港政府は、学校、メディア、インターネットなどで市民への教育を要求する
というものがありました。
インターネットの閲覧、情報アクセスへの制限がある可能性が出てきますね。
そうなると、日本企業でも香港支社などは沢山ありますが、香港での事業の進出の継続は非常に厳しい状況になってきてしまいます。
香港のデモ、国家安全維持法のまとめ
雨傘運動にしろ、2019年から続いた一連のデモ活動も、香港市民が当然得るべき民主主義を主張した内容のものでした。
しかしながら香港政府が香港市民と折り合いをつけられず、結局中国中央政府が納得できない状態を「国家安全維持法の施行」という力でねじ伏せたような形となってしまいましたね。
そのまま逃亡犯条例も改正されてしまった形になりましたね。
香港市民にとっては、まだ引き続き続くはずであった「一国二制度」が事実上崩壊したような状態になっています。
また、日本人にとっても、香港との付き合いが国家安全維持法の施行により難しくなるという結果を招いているのは事実です。
今後報道の自由、言論の自由もどんどん厳しく統制されていくと思われます。
周庭さんをはじめとした香港の民主活動家の方々も心配ですね。
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