香港の国家安全法とは?分かりやすく解説~中国が決める理由

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こんにちは。

旅プロJewelです。

 

5月24日、香港で大規模なデモが行われ、180人以上が逮捕される事件がありましたね。

 

デモ参加者は数千名を超えたようで、現在当然ながら香港もコロナ禍であり、集会や、デモをするのも厳しい状況であったのにも関わらず、なぜこのような事態が起きたのでしょうか。

この原因は、新型コロナウイルスの流行を受けて延期されていた中国の全人代(日本でいう国会に相当)が22日に開幕し、その中で出された香港に対する1つの議案「国家安全法」にあります。

この議案に対するデモは香港でコロナの感染拡大が始まった1月下旬以降、最大規模のデモとなってしまいました。

 

それでは、なぜ今、香港のデモがこのコロナ禍で再発したのか、その原因となった香港の「国家保安法」がどんなものなのか、中国がどう関わってきたのかを分かりやすく解説していきます。

 

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香港の「国家安全法」とは?

そもそもの中国と香港の関係

1842年のアヘン戦争が終わったあと、香港は150年以上植民地としてイギリスが統治していましたが、1997年に中国に返還されました。

 

その際に、イギリスと中国は文書を交わし、中国と香港は『一国二制度を50年間続ける』と決めています。

一国二制度というのは、香港が社会主義国の中国の中にありつつも、特別行政区として外交と防衛以外は「香港は独自の政府を持ち、資本主義や司法の独立などが保証されている」制度です。

 

この制度が導入された理由は、中国は社会主義の国であり、香港の人々は150年もの間イギリスの法制度や民主主義の下で生活してきたわけですから、急な返還で生活様式を一変させることが難しいと考えられたための措置ですね。

50年の間で徐々に慣らせていこうというわけです。

 

2047年まで、外交と防衛以外、香港は中国とは異なる他の民主主義国家と同様、言論の自由や集会の自由、報道の自由なども認められている状態です。

 

パスポートも紙幣も中国と香港は違いますし、オリンピックなどでも中国と香港は別で出場しますので、香港は1つの国のように見えますが、

特別行政区という位置づけになっています。

 

国家安全法って何?

国家安全法とは、香港の「憲法」に当たる香港基本法23条(政権転覆や国家分裂の禁止)のことを指します。

さらにこの23条では、香港特別行政区自身が、香港の法制度の下で23条の具体的な違反行為を「国家安全条例」として定めなければならないとしています。

 

つまり「香港基本法23条」

国家への反逆、国家の分裂、反乱の扇動、中国中央政府の転覆、国家機密の不正な取得を禁止し、外国の政治組織が香港で政治活動を行ったり香港の政治団体が外国の政治団体と関係を持ったりすることを禁止する

に書かれている禁止されているもの、つまり「違反行為」が具体的に「どのような行為なのか」決めないといけない事になります。

 

しかしながら、いまだ「国家安全条例」は制定されておらず、これまでも制定に向け香港政府も動いてきましたが、2003年に国民の大規模デモにより頓挫してしまった経緯もあります。

 

なぜまだ制定されていないの?

香港基本法には、
香港住民は法の下に平等であり、言論・報道・出版の自由、結社・集会・デモの自由、非合法に逮捕、拘留、監禁されないなどの人身の自由、移動の自由、信教の自由などを持つと記されています。

私たち日本の法律と同じように民主主義らしい自由が沢山認められています。

 

しかしながら、香港基本法23条がしめす「扇動行為」の具体的な行為が何かを「国家保安条例」の中で、例えば「大衆の気持ちを煽ったり、ある行動を起こすようにしむけることを煽るような文書の出版」と制定されてしまったら、

国民からすると、一国二制度で認められているはずの表現・言論の自由や民主主義が損なわれるかもしれない!となりますよね。

 

つまり「国家保安条例」で国家保安法(香港基本法23条)に制定されている内容の具体的行為を決めてしまうと、一国二制度との矛盾が起きてしまうこともある訳です。

 

そこで、国民の反対運動にあい、いまだ制定できない状況にあるわけです。

なぜ中国が香港の「国家保安法」を制定?

 

本来であれば、香港基本法の中にある国家安全法は香港政府で決められるものと考えられますが、なぜ今回中国が入ってきたのでしょうか。

更に「一国二制度」下の香港では、原則として中国本土で制定された法律がそのまま適用されることはありません。

中国中央政府が動き出した経緯

中国中央政府は香港の国家安全条例に関して「早く決めて!」と何度も言及してきましたが、今回、急に中央政府が制定に動き出した背景には、2019年6月から続く一連の大規模な抗議活動があります。

(昨年からの国民のデモや抗議活動は多くの方がTVやニュースで知っているかと思います。)

なのでまずは香港の治安維持のためにいち早く国家安全法を制定し、抗議行動やデモを抑え込みたかったわけです。

 

また、逃亡犯条例の改正反対運動から長く続く香港での国民の抗議活動に対し、度々諸外国勢力が「中国の内政問題」である香港問題に介入していることに対しても中国中央政府は批判しています。

要するに、外国が中国の内政問題に介入してきている、国際法で義務化されている国同士の内政不干渉が守られていない、

香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わる!として、全人代が香港の「国家安全法」を今回制定するに至ったわけです。

 

だから、このコロナ禍で各国の目がなかなか中国に向かない事情も鑑みて、全人代が始まってすぐ「このタイミングで」議案が出されているとも言われていますね。

 

とはいえ、香港国民は基本的に香港政府に対してデモ活動を行っているわけですから、中国中央政府は関係ないとも思えますが、この一連のデモを止められていない、

「国家安全条例」も制定できない香港政府に対して、中国中央政府も信頼できない、業を煮やしたという事になりますね。

香港政府は中国中央政府の言いなりという話もありますが。。。

 

中国中央政府の狙い

先ほど、「一国二制度」下の香港では、原則として中国本土で制定された法律がそのまま適用されることはありません。

と書きました。それなのになぜ中国中央政府は香港版の国家安全法を制定できるのでしょうか。(中国では2015年に国家安全法が成立)

 

「香港基本法」には、には例外規定が設けられており、今回中国中央政府はその規定を用いて、国家安全法の強行導入を図ろうとしているわけです。

例外規定とは?

香港基本法18条に、「付属文書3に記された全国的法律」は例外として香港でも実施されるというものがあります。

つまり「付属文書3に記された全国的法律」は中国全土、特別行政区の香港も守らなくてはいけない法律となっているわけです。

 

香港立法会(議会)での審議などは必要なく、香港国民に対し中国から香港を通り越して直接法施行が可能になります。

(あれ?香港は「一国二制度」で中国から司法の独立も認められていたはずでしたよね。)

18条は香港の司法の独立の例外を認めてしまっていたわけです。

 

現在、付属文書3には中国の国籍法や外交特権などが含まれていますが、今後中国中央政府が主導となってここに国家安全法を組み込む方針で進めていくことになったわけです。

夏以降から中国介入のもと香港の国家安全法が決められていくこととなります。

一国二制度の崩壊?

このように、香港基本法の18条の「付属文書3」を使って、今後も中国中央政府が香港国民の基盤となる法に介入できるようになると、

2047年まで守られるべき、言論・政治活動の自由をさらに制約されることになるかもしれません。

そうなると一国二制度の意味がなくなりますね。

 

中国による香港版国家安全法の制定

今回の香港版の国家安全法に、中国中央政府が介入することは香港政府も賛成しています。

中央政府や香港政府は香港基本法の定める範囲内、つまり一国二制度の枠組みを壊すことなく国家安全法を定めるとしていますが、

香港国民にとっての守られるべき「国家安全」がどのようなものであるかという解釈と国側の解釈の乖離がないものになるよう願っています。

 

 

 

 

 

 

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コメント

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